「合格実績」は一部の上位者が複数の有名大学に合格している可能性があることを知っておく
中高一貫校を選ぶ時に「卒業生がどんな大学に合格したか」という合格実績は気になる方もおられると思います。有名大学に合格者を多数出している学校を見ると「この学校に入ればこんなすごい大学に受かるのか」と思ってしまいがちです。
ここで気を付けたいのは、大学受験は一人でいくつもの大学を受ける、ということです。ある高校にとても成績優秀な生徒さんがおられた場合、その人一人だけで複数の難関大学に合格するということはあり得ます。そういう人が何人かいれば、見た目上、難関大学に多くの合格者を出しているように見えます。
合格実績に書かれている合格者数と、卒業生の数が同じなら、一人一校、ということになりますが、合計していくと、1学年の人数より明らかに多い合格者数になる場合は、一人につき複数合格している、ということです。
学校が強調していない、「普通の」生徒たちが、どこに受かったかも全部確認する
冷静になって、他の人たちがどんな大学に合格したのかを全部見ていくと、案外、普通の大学名も出てくるかもしれません。地元の公立高校からも合格できるような、普通の大学名が出てくるかもしれません。
一部の成績上位者以外は、普通の大学に行く、という場合もあるので、そこは注意してみておきたいところです。
苦労して多額の教育費をかけ、6年間の学費もかけたとしても、卒業後の進路は割と普通、ということはありうるのです。
高校側としては、有名大学に合格者が出たことを目立つように大きく宣伝します。
その宣伝以外の、普通の生徒さんたちの進路についても見ておくなら現実的なイメージが持ちやすくなると思います。
中学受験用の塾は有名中学の合格実績を増やして次年度の宣伝に使いたい
中学受験用の塾にも「〇〇中学〇名合格!」と、大きな文字で書いてあると思います。
どこの塾も、一生懸命指導を行っていますが、一般の方がみても「どこの塾がいいのか、よそと比べてどれくらい良い塾なのか」ということはわからないと思います。うちの塾は良いですよ、ということを最も分かりやすくアピールできるのが「合格実績なのです」
生徒さんの夢をかなえてあげたい、というのはもちろんですが、経営という観点で見ると、今年の受験生をいかに多く難関校に受からせるかによって、次の年度の入塾者が変わってくるかもしれないのです。ライバルの塾に合格実績で引けをとると、お客さん(生徒さん)がそちらに流れてしまうかもしれません。
現場で教えておられる先生方は、生徒さんたちのために一生懸命教えておられると思いますが、生徒さんたちのためだけではない、ということも知っておいて損はないと思います。
そのような状況では、本当に生徒さんのためになるか、ということよりも、「少しでも偏差値の高い学校に行きましょう」という空気になりがちです。
その空気に飲み込まれて冷静な判断力を失わないようにすることも大切です。塾側は受からせればそれで終わりですが、生徒さんにとっては受かった後の人生が待っています。そういったことも考えて志望校を選ぶことが重要です。
中学受験は「大きな買い物」をするのに似ている
私立高校が大学の合格実績をアピールするのは「宣伝のため」です。受験者数を増やしたり、高い学力の人たちに選んでもらえるように「うちの学校は素晴らしい教育をしていますよ」と言いたいのです。前の記事にも書きましたが、少子化で私立はつぶれる、と言われているように、生徒さんを獲得できるかどうかは学校にとって死活問題なのです。
私立大学がわざわざ都会の地価の高い便利な地域に多額の費用をかけてキャンパスを移転するのは生き残るためです。周りに何もない田舎の大学より、そのほうが学生を集めやすいと考えるのです。そのためにかかった費用は生徒さんたちから回収することになると思います。
新型コロナウイルスにより、休校が長引いたとき、「9月を新学期にしてはどうか」という意見が出ました。
ですが、もし本当に新学期を遅らせて9月はじまりにすると、私立の学校は、授業料やその他のお金が全く入ってこない空白の数か月ができてしまいます。それでは私立の経営が成り立たず、潰れる。だから潰さないために税金で補助するのか、もしそうだとしたらどれだけの負担が必要なのか、という点も議論されていました。
私立は「学校」ではありますが、「ビジネス」である、ということも忘れないほうがいいと思います。
慈善団体ではありません。税金で賄われているわけでもありません。
私立を受験する、というのは、6年分の教育、学校生活、という「大きな買い物」をすることでもあるのです。
学校側が与える情報だけに頼らず、実際に私立に通っている人の話を聞くなどして、現実的な目を持っておくことも重要です。
まとめ
- 一番目立つ合格実績だけではなく、全員がどんな大学に合格したかをきちんと確認する
- 中学受験の塾にとっても合格実績は次のお客さんを獲得するための宣伝
- 私立受験は「6年分の教育や学校生活」という大きなものを買うのと同じこと。買った後のことも考えて選ぶ
- 偏差値が高いほうが良い、かどうかは周りの空気ではなく自分で見極めることが大切。そのために、「宣伝」以外の情報も取り入れる