中学受験は幸福への入り口?

「情報」は「宣伝」であるということを忘れない

中学受験を考えている親御さん達は、目指している憧れの中学がどんなにすばらしくて、どんなにいい教育を施してくれるのか、ということについてはよくご存じだと思います。そういった情報は「情報」とはいうものの、実際には「宣伝」であることも少なくないのですが、そのことはあまり気に留めずに受験される方もおられると思います。

受験、特に富裕層と呼ばれる方々のお子さんが経験される「中学受験」は、教育というジャンルであると同時に、様々な「ビジネス」をも生み出しています。日本全国に数多くの名門校があり、それらの中学に合格させるための進学塾、家庭教師、教材などが毎年多額の費用と引き換えに利用されています。また、「少子化で私立がつぶれる」と言われるように、私立の学校もまたビジネスなのです。生き残りをかけて宣伝を行い、少しでも優秀な生徒さんに多く受験してもらいたい、という切実な事情があります。

車や宝飾品ならば、失敗したとしてもまた買いなおすことができます。ですが、お子さんの人生は物のように簡単に取り換えたり、修理したりできません。お子さんに幸せになってほしいから受験をされる方も多いと思いますが、その受験が失敗だったと後から分かり、親子共に大きな苦しみを経験されることは本当に残念な事です。

そうならないために、中学受験をする前に、少し頭の隅に入れておいていただけるといいのではないか、と思うことをまとめました。

中学受験によって、望んでいた進路に進めた、なりたかった職業につけた、楽しい青春を送れた、という方ももちろん大勢おられると思いますので、すべての受験が不幸な結果になるとは思いません。

受かってから後悔するのではなく、受ける前に、学校や塾からではない情報も知ったうえで、志望校を決められるほうがより良い選択ができると思います。

中高一貫教育は成功を約束する夢のような世界ではない

中学受験というと、実際は親御さんの受験、という雰囲気になりがちです。本人である子供さんよりも、親御さんが必死になったり、「良い中学に受からなければうちの子の人生は終わりだ」と言わんばかりの張りつめた空気になってしまう家庭もあると思います。

ですが、そもそも、公立中学に通う人のほうが圧倒的に数は多いようです。

年度や資料によってばらつきはありますが、全国で言うと、私立中学に通う生徒さんの割合は、およそ7%ほどのようです。東京だけで見ると25%ほどになりそうです。100人中、私立に通う子は7人程で、90人以上は公立中学に通っている、ということを考えれば、良い中学に受からなくても人生が終わるわけではないと言えそうです。私立中学に行かなくても普通に人生を生きている人たちは日本中に大勢いると思います。

中には特別な事情があり、どうしても〇〇中学に行って○○大学に行かなければ、という人もいるかもしれませんが、その中学に受かったからといって、目当ての大学に入れるとは限りませんし、その大学に行けば絶対幸せ、かどうかは誰にもわかりません。

そんな分からないことだらけの不確かな事に、人生がかかっている、と思い込んで親子関係を破綻させるとしたら、その方がよほど不幸なことに思えます。

「○○中学絶対合格」と言って、有名中学に誰でもいいので誰かが受かってくれたら得をするのは学習塾です。

来年の新規生徒募集の宣伝に使えるからです。

もちろん先生方一人一人は、子供たちのことを思い熱心に指導をされていると思いますが、「なぜ中学受験をするのか」という、本来の目的、子供さんの幸福、ということを忘れないほうがいいと思います。

まとめ

  • 私立中学に通う人は全体の7%前後、東京だけだと25%前後。ほとんどの人は公立中学に通っている
  • 「良い中学に行けば絶対幸せ」「受からなければ人生終わり」とは限らない
  • 中学受験のために親子関係が悪くなるのは、本末転倒。「何のため、誰のために受験するのか」を忘れないようにする